会長 奥 正之

奥正之会長

 有信会員の皆さまにおかれましては、ご清栄にてお過ごしのこととお慶び申し上げます。

 さて、昨年は、新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大し、「ニューノーマル=新たな日常」という言葉が一般化する中で、社会経済の構造変容、生活・行動の変化を迫られた 1年でありました。本学でも、オンライン授業と対面授業のハイブリッド方式が採られる一方、各種行事が中止或いは延期となり、昨秋開催予定の4年に一度の汎有信会大会も、今秋に延期されました。

 私は、平素より、21世紀は「不確実」「不安定」「不透明」「不連続」であるが ゆえに「複雑性」が高まる「5つの」の世紀であり、これらを常に頭において企業経営に当たらねばならないと言ってきました。偶々ですが、近時、海外では同趣旨からこの時代を、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の各頭文字を取って「VUCA」の時代と呼ぶ向きもあります。事実、世界では、新型コロナウイルスの流行、地球温暖化に伴う気候変動や異常気象、社会構造の分断化、米国政権移譲に見る民主政の動揺、英国のEU離脱、中国の強権化など、予測困難な事象が次々と起こっています。

 一方で、京都大学は、開学以来、「自重自敬」を根幹とした自由の学風を伝統とし、独創性を涵養し、多様な学びと新しい発想による研究を通じて様々な課題解決に寄与してきました。山本敬三法学研究科長・法学部長も「目標を自ら設定し、それを達成するためには、何をどうすればよいか、自ら考え抜く」ことの重要性に言及されていますが、これこそ、「5つの」「VUCA」の時代に向き合い、困難な課題を克服していくために求められるマインドセットではないかと考えます。その意味で、現在進められている、医療・環境・AIといった先端的な法政策課題について学際・国際・実務との協働による共同研究センター構想の早期実現が強く望まれます。

 京都大学法科大学院は、3年前の司法試験において史上初の合格者数全国第1位(128名)、一昨年は126名で合格率全国第1位の成績を収めましたが(昨年は107名、全国第3位)、法曹界だけでなく、本学卒業生が各界において活躍されていることは、ひとえに教員の皆さまの地道で的確かつ全人格的なご指導と、学生の皆さんの真摯なる研鑽の賜物であり、卒業生として大変誇らしく嬉しく思います。

 引続きコロナの問題をはじめ厳しい状況が続いておりますが、卒業生が本学での学びを通じて得られた叡智を活かして、この困難な時代の克服に向けて多方面で活躍されることを期待しております。本会は、学生・教員・卒業生の親睦団体として、より活発な交流を通じて結束を強め、本学の取組を全面的に支援して参りたいと思います。会員の皆さまにおかれましては、相変わらぬご支援、ご協力 をお願い申し上げますとともに、今秋10月30日(土)開催予定の京都での汎有信会大会にて旧交を温める機会を楽しみにしております。

有信会誌 第73号(2021.3.1)