副会長 法学研究科長・法学部長 洲崎 博史

洲崎博史副会長

 平成29年4月1日付で京都大学大学院法学研究科長・法学部長を拝命し、有信会の副会長を務めることになりました。有信会会員の皆様には、平素より、法学研究科・法学部へのご支援をいただき、心よりの感謝を申し上げます。微力ではございますが、有信会活動を充実したものとするため努力を尽くす所存でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以下では、皆様に、京都大学大学院法学研究科・法学部の近況を報告させていただきます。

 まず第一に、京都大学法学研究科・法学部における教育についての近況を報告します。

 法学部では、ここ数年、法学・政治学の教育を通じたグローバル人材養成という目標に向けて様々な取組みを行ってきました。(1)1回生を対象として、法学・政治学文献に親しみつつプレゼンテーション能力・コミュニケーション能力の向上を目指す少人数教育科目(「法学部基礎演習」)の開講、(2)日本や諸外国の法状況・政治状況を学びつつ、英語スキルの向上も目的とする外国人教員による外国語での専門科目の開講(「Introduction to European Law」、「Japanese Politcs from a Comparative Perspective」)、(3)実務家非常勤講師による実務関連科目の開講(「アセットマネジメントの実務と法」、「生命保険の実務と法」、「金融法と銀行実務」、「信託法の理論と実務」、「国際企業取引の実務と法」、「現代社会と弁護士」)などはその例です。また、学生への進路関係情報の提供にも力を入れており、民間企業の人事担当者の方々らに当該企業や当該事業分野の魅力を語っていただく企業特別講演会を春と秋に開催しているほか、本学部を比較的最近卒業し、各界に進まれた若い先輩方に入学式後の懇親会を含む様々な場で現役学生と交流を持っていただくという取組みを有信会の人脈を活用して行っています。京都大学法学部の価値を維持し、さらに高めるためには、これからも優れた人材に入学してもらわなければなりませんが、そのためには、良い授業、魅力的なカリキュラムを提供するだけでは足りず、有信会という強力な同窓会組織も含めた総合力をアピールする必要があると考えています。有信会会員の皆様には引き続きのご支援をお願いいたします。

 法学研究科法政理論専攻は研究者養成を目的とする課程であり、これまで優れた法学・政治学研究者を輩出してきました。平成23年度以降は、国からの予算措置も受けながら、法科大学院経由で博士後期課程に進学した研究職志望者に対し、外国語教育の受講や外国の研究機関で短期在外研究を行うことの支援等をしています。平成16年の法科大学院制度創設以降、全国的にみて法学研究者の養成が順調に進んでいるとはいえない中、京都大学法学研究科は法科大学院出身者を研究者として養成することに成功している数少ない拠点となっており、このミッションの継続は本研究科の最重要課題の一つであると考えています。その一方で、本研究科では、企業実務家や実務法曹の方々に本研究科を学習・研究の場として活用してもらう取組みを近年積極的に進めてきました。法学・政治学に関連する高度専門職の実務経験を有する人を博士後期課程に受け入れる社会人特別選考制度はこの10年の間に定着し、この制度により博士号を取得する人が何人も生まれています。平成27年度からは長期履修制度の導入や社会人特別選考入学者についての修了要件の緩和など、社会人が在職したまま学位を取得することを容易にするための改革を行いました。さらには、平成28年度から、法学研究科法政理論専攻修士課程に、従来の研究者養成のためのコースとは別に、企業法務を中心とする先端的な法的問題に対応できる人材を養成するための「先端法務コース」を新設しました。現在既に企業法務・自治体法務等を担っている社会人を念頭に置き、これらの方々に、先端的・専門的なスキルを習得する場として大学院を活用していただくことを企図したものです。京都大学法学部や京都大学法科大学院を出られ各界で活躍されている有信会会員の方々におかれましても、さらなるキャリア形成に向けて法学研究科法政理論専攻を活用していただければ有り難く存じます。

 法学研究科法曹養成専攻(法科大学院)では、平成28年司法試験で105名の合格者を出しました(合格率47.3%。全国平均20.68%)。合格率では平成21年以降8年連続で全国4位以内、平成26年以降は3年連続で全国3位以内を維持しており、とりわけ既修者では平成27年・平成28年とも全国1位の合格率(27年69.8%・28年64.4%、順位は合格者5名以上の法科大学院で算出)を達成しました。本法科大学院の教育内容についてはもとより外部から高い評価を受けているところですが、3年前からは「法科大学院公的支援見直し加算プログラム」のもと、本法科大学院の魅力をさらに高めるための取組みをいくつも行っています。同志社大学法科大学院との連携による英語授業や海外エクスターンシップ科目の新設、法文書作成トレーニングのための未修者向け授業の新設、未修者向け特別入試(主として出願書類と面接によって合否判定を行う入試)の東京会場・京都会場での実施、法学部3年生からの3年次飛び入学制度の導入、就職支援活動の強化などはその例です。全国的にみると、募集停止をする法科大学院が相次ぎ、かつての有力校ですら学生集めに苦労し始めるなど、法科大学院の人気低迷に歯止めがかからない状況にあります。京都大学でも法科大学院在学中に司法試験予備試験に合格し、または予備試験合格資格で司法試験を受験・合格した者が法科大学院を退学するという例が徐々に増えつつあります。法科大学院における優れた理論教育・実務教育を通じて、指導的法曹となりうる人材を養成するという目標に正面から取組み、これを十分に達成してきたと自負する我々にとっては誠に残念な状況ではありますが、逆風にめげることなく、今後も引き続き改善に努めてまいります。

 第二に、学部入試改革についての近況を報告します。

 京都大学では、平成28年度入試から、「一般選抜」のほかに「特色入試」を導入しました。法学部では、世界・国家・社会の様々な問題に対する強い関心を持ち、多方面にわたる基礎的な学力を備え、論理的思考力に優れた人材を求めるため、後期日程で小論文試験を課し、大学入試センター試験、調査書に対する評価と総合して合格者を決定するという仕組みを特色入試として採用し(一般選抜の定員310人に対し、特色入試の定員20人)、これまで2度の特色入試を実施しました。この特色入試が有為な志願者を集め得たのかどうかの本格的検証ができるのはまだ先のことになりましょうが、現時点においても既に、一般選抜では掬いきれない多様な優れた人材を入学させることができたという感触を抱いております。一方、本年5月には、現在の大学入試センター試験に代えて平成33年1月から「大学入学共通テスト(仮称)」という新たな入試制度が実施される予定であることが文部科学省によって公表されました。今後、各大学において新制度の導入に向けた検討が開始されるものと思われますが、京都大学法学部としても、その教育理念やアドミッション・ポリシーの検証を続ける中で学部入試のあり方について検討を重ねていく所存です。

 京都大学法学研究科は、昨年度末に松岡久和先生(民法)、亀本洋先生(法理学)、佐久間毅先生(民法)、杉田裕幸先生(検察実務、実務家教員)をお送りするとともに、今年度より鈴木秀光教授(東洋法史)、吉政知広教授(民法)、二ノ丸恭平教授(検察実務、実務家教員)をお招きしました。教員一同、京都大学法学研究科・法学部の研究教育に全力を注いでまいりますので、有信会会員の皆様におかれましては、これまでと同様、ご指導・ご助言を賜りますよう、お願い申し上げます。

 最後になりましたが、10月21日には、京都ブライトンホテルにて、3年に1度の汎有信会大会が開催されます。その折に多くの会員の皆様とお会いできることを楽しみにしております。